2017-03-29

起業に見る群像劇

起業を志望する方からご相談を受けることがあります。「いつかは独立したい」と考える人は自らの希望や理想、怒りや憤り、悔しさ、あるいは強い問題意識をお持ちです。「見返してやる、認めさせてやる」という秘めた復讐心に突き動かされる人がいる一方、気負いなく屈託なく、何となくスルスルと環境が整ってしまう稀有な人もいます。動機や実現したい事業もさまざま、リソースや資本(経験値や文化資本も含め)もそれぞれ。ORIGAMIでも公序良俗に反した活動や不誠実な態度のビジネスでない限り全面的にお手伝いをしています。起業には不信を上回る勇気が必要ですし(特に40代以降ともなれば)、周囲を巻き込み説得できる情熱やビジネスプラン、顧客や市場、審美性、資金調達能力、好感の持てる人間性や人柄等、一定の要素や条件は備わっていた方が良いことは言うまでもありません。何事も「やってみなければ分からない」ことはもちろんですが、楽観に立ったとしても不利で危険なゲーム・地雷原での匍匐前進としか評価できない案件もあり、私たちのアドバイスや見解をお伝えするのも悩ましいところです。しかしながら一般論として独立起業に失敗したときの精神的・肉体的・経済的・社会的ダメージは重く(その多くは当人の思い込みに過ぎないとしても)、家族や関係者にも色濃く影響し、繰り返しその有様だけを見ては無念さや後悔や罪悪感を募らせ自責するというスパイラルに陥りがちなのです。

それでも人の人生は測れません。命に関わることだってありますが、渦中にあるときの苦しく耐え忍ぶ時間が、10年経って振り返れば「実に味わい深い、そして必要な経験だった」と当人の人間味として年輪を刻むこともありましょう。家族や関係者も苦い思い出から役に立つ示唆を得ているかもしれず、そのことがまた巡って誰かの人生を助けるかもしれません。それにしたってわざわざ傷つく必要もない。そんなことを逡巡しながら、目の前の人に一体何をどう伝えるべきか、伝えるべきだったのか、答えは出せません。しかしまた何か意味のあるご縁でもあるでしょうから、やはり正直に、感じたことや専門的な見地、意外な可能性や潜むリスクをお伝えするのです。全てはタイミング、ピタと合えば確率は高いですし、逸すれば、新たなタイミングを掴むまで眈々と力を蓄える。でも起業一直線、視野や思考が狭まっているときに、そんな客観性や柔軟性を発揮できるなら苦労しませんよね。議論を重ねた上で、結論として「やり遂げる」と決めた以上、ブランドデザイン会社としては不利な制約を突破するデザインで事業の持続可能性を高めることに集中していきます。事業は長距離レース、バイオリズムだってあります。数年華々しくして消えていくよりも立ち続けていられることが大切でしょう。そのうちにティッピングポイントにだって乗れるはずです。肩の力も抜かなければ。ただひとつ、生命力と愛情が感じられない人には例外なく動かないことを勧めています。

 

 

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